第1章

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「お家をジロジロ見たり、手を突っ込んでごめんなさい。」って。 じゃあ、諦めるしかないんだって思ったから。  急に。目が。大きくなって。 「ああ、お前さんは良い子なのだね。何か用かい?」  たまたまだったけど、目目さんが言ってくれたから、落とした 100円の事を言ってみた。目目さんは100円は解らないけれど。 そう言って、少し離れなさいと言ったから、離れて見てた。  ブワーと熱い風で、ジュース機械の下の小銭が何枚も外に出た。 「その中に100円というのは、あるのかね?」 「これです!ありがとうございます!あと、あの。その。」 「何か用かい?」 「他の一緒に出たのは、お巡りさんに持ってっても良いですか?」 「わたしは必要ない。好きにしていいが1つ約束しておくれ。」 「何ですか?」 「ワシと話した事は誰にも内緒だ。ただ拾ったと言いなさい。」 「わかりました、またね!お目目さん。」 「またのう。お嬢さんや。」  お巡りさんは、随分あっちこっちの自販機から見つけたんだねえ。 偉いねって言って、ご褒美に林檎ジュースをくれた。美味しかった。 お目目さんの事は言わなかったけれど、帰り道でもう一度覗いた。  でも、もう何も居なかった。呼んだけど返事もなかった。 それでも、ありがとう目目さん。とは言っておいた。 これは一昨年の事です。それっきり、お目目さんには会っていません。  もうトコも2年生なので動販売機に手が届きます。  かりんとう姉妹のお話。  夏休みも、もうすぐ終わりという頃の事です。 トコは夏休みの宿題はちゃんとやってました。もうすぐ終ります。 でも、リン姉は勿体無いって言うの。バカみたいだって。 「折角、沢山お休みなんだから宿題なんか、最後の最後でいいの。 トウコ(燈子)は真面目っていうか、バカ正直なんだよ。」 「バカじゃないし、バカっていう方がバカだもん。」 「ワタシは馬鹿じゃないよ。頭いいから最後のギリギリでも 全然、余裕で間に合うの。4年生にもなるとね勉強も難しいけど、 天才っていうのは、理解されないも。の。な。の。さ。」  お母さんがリン姉の後ろにいる。トコは黙ってただけだもん。 「鈴子、天才だったら先に宿題を終らせて、家の手伝いもやって 妹から尊敬されるお姉ちゃん!なんじゃないかなぁ?」 「えっと、ワタシ宿題しよっと。晩ご飯なったら呼んでね。」 リン姉は部屋に逃げちゃった。
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