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買い物に出れば、あれこれ横から口を挟んで「これは趣味が悪い」だの「おれの言うこときいてこれにしとけ」だの親よりも口うるさい。
ビデオを借りに行けば、「これが観たい」と勝手にカゴに放り込んで、俺が観なかったら「なんで一緒に観ないんだよ」と文句を言う。
腹が減れば『ハラへって死にそう。死んだら陽太のせい』とメッセージを送ってくるし『だから駅前のベーカリーのカレーパン買ってきて』とパシリのようにこき使う。
以前、黙ってコンパに行ったときは、嫌がらせのように帰るまでLINEにスタンプの絨毯爆撃が敷かれていた。それを見たときは怒るを通り越して、呆れて脱力した。
けれど、未来がそのとき、俺が帰るまでずっとひとりでこの部屋で、返事を待ってスタンプを打ち込んでいたのかと思ったら、そのときはちょっと可哀想に思ってしまった。
未来は俺以外には懐かない、いや他人には簡単には懐けない、神経質な子犬みたいな性格をしていた。
今だって、不貞腐れてはいるけれど、頼りげない瞳でこっちをちらちら見上げてきている。それを眺めていたら、しょうがないか、と言う気になってしまった。
「……わかったよ。コンパには行かないから」
「ホント?」
飛びあがる勢いで返事をする。ぴょんと跳ねて、上体を起こしてきた。
俺は上着を脱いで、未来の横に腰をおろした。手にしていたスマホで幹事に『悪い。今日は行けなくなった。ドタキャンでごめん』とメッセージを送る。覗き込むようにして、それを確認した未来は、自分もスマホを取り出した。
「だったらさ、パズドラやろーぜ、陽太。おれ、このまえ新しいモンスター手に入れたんだ」
さっきとは打って変わって、急に笑顔になった未来が身を寄せてくる。
「俺もこのまえガチャでレアゲットした。じゃあ、今日は未来とパズドラ三昧するか」
うん、と嬉しそうに頷く顔を見ていたら、コンパには行かなくてよかったかなという気になった。傍にさえいれば、未来は機嫌がいい。素直じゃないし口も悪いけど、こんな笑い顔を見せるときだけは、男だけどかわいいなと思えてしまう。
ふたりで互いのスマホを見せ合って、プレイしようかとしたところに、俺の方の通話機能が呼び出しをかけてきた。見れば幹事のクラスメイトからだ。
「はい」
すぐに出ると、相手は泣きそうな声をあげた。
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