絶対命令

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その命令は、何をもたらすのだろう? 何一つ関心を持たなかった僕は、ふと世間の声に耳を傾けた。 不安、焦燥、怒号、絶望。 期待、安堵、祈り。 こんな感じだろうか。 いくつもの感情がせめぎ合って、うずまきあって。 でも、それらは決して分かり合おうとはしていないように僕には思えた。 相手をどう打ち負かすか。 父は、こう言った。 「この命令は必要不可欠なものだ」 母は、こう言った。 「この命令は絶対に聞いちゃいけないものだ」 弟は、こう言った。 「これってなんの意味があるの?」 僕は、何も言えない。 何も知りはしない僕は。 傷つくことを嫌がった僕は、知ることすらしようとしなかった僕は何も知らない。 冷ややかな風が僕の顔に打ち付ける。 物思いに沈んでいた僕の目の前に現れたものは。 左か、右か。 どちらかを選ばなくてはならない分岐路だった。
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