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トイレの個室に入るやいなや、僕は鍵を閉めて、ポケットから先のラブレター(仮)を取り出して見る。
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突然すみません。
あなたにどうしても伝えたいことがあります。
今日の放課後、屋上のタンクの後ろに来てくれませんか?
島村 真耶
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文章はほんの数行だったが、見ず知らずの女の子からの手紙で、かつ『どうしても伝えたいことがある』と書かれていたら、やっぱりこれはラブレター(確定)でいいだろう。
さっき土間で読まなくて良かった。多分、今の僕の顔はにやついていて、かなり気持ち悪いだろうから。
◇◇◇
「島村 真耶っていう生徒、知っているか?」
昼休み、僕はラブレターの主のことが気になって、購買で買ったパンを食べながら、友人の岸田 海に訊いてみた。
海は、そんな俺の問いに対して焼きそばパンを食べる手を止めて、こちらに目を向ける。目付きが悪いせいで、睨んでいるように見えなくもない。
「島村 真耶?知らねぇな。誰だよソイツ」
ちょっとぶっきらぼうに、だがちゃんとした答えを返してきてくれた。もっとも、その答えにはちょっとだけ残念だったけど。
「いや、な。ちょっとさっき色々あってな」
ラブレターのことをいうのはいくら友人だからって(いや友人だからこそ、か)嫌なので、そこは伏せながら海からの質問に答える。
すると、
「ふぅん……ま、どうでもいいか」
と呟いて彼はまた、焼きそばパンを食べ始めた。
海は興味のないことには、無反応だからか、はたまた僕の言いづらそうな雰囲気を察してくれたのか、それ以降はその話には触れてこなかった。ホントありがたい。
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