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終わりかけはいつだって辛いけど、今回は特にそう。
ポケットに入れた手の中、仕事道具のレザーをそっと触る。
すいっとその刃を横に引いたら。
細い一本の線が引かれるだろう。
薄い紅色の線からは、ぷつりぷつりと紅色の球が浮かんで。
だんだんと大きくなってやがて流れるだろう。
それもいい。
流れる液体を見守るのもいいけど、紅色の球をなめとるのも、楽しいかもしれない。
でも、ちょっとばかり今はそういう気分じゃない。
どちらかというと思いっきり体当たりでもして、突き立てた刃物をグイグイとねじ込んだ後、思いっきり抜いてしまいたい気分。
時折、俺の愛しい人に連れられてくる、彼の最愛の人はどんな風になるだろう。
泣くかな。
取り乱すかな。
倒れこむだろうか。
その時に、俺の最愛のあの人は、どんな様子を見せるんだろう。
でも。
と、改めて自分の手元にある道具を思う。
俺の手持ちの道具は、突き刺すようにはできていない。
どちらかというと、薄く傷をつけるのに向いてる。
だったら、たくさんたくさんの切り傷をつけてみようか。
大事に大事にされてる、彼の最愛の人に、紅の線で絵を描くように。
最初から知っていた。
俺の大好きなあの人は、誰のものにもならない人。
自由なのが似合う人。
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