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店外で待ち合わせするのは、久しぶり。
あの人は忙しい人だから。
指定されるのはいつも有名待ち合わせスポットの、その中でも人気の少ないところ。
待ち合わせはしやすいけど、人気が多いのは苦手だと…そう言ってたけど、多分、苦手なのはあの人じゃなくて、連れてくる甥っ子の方。
今日は甥っ子連れてくるのかな。
時々待ち合わせに連れて来るんだよね。
食事だけ一緒にして、そのあとは俺との時間になる。
今日連れてきたら、試してみようか。
あの人が、どんな顔をするか。
そんなことを思っていたら、来たのは甥っ子一人だった。
待ち合わせには来るらしい。
そうか。
今日もいつもみたいに食事だけして、そのあと俺と過ごすつもりなんだ。
でも、この子が一人ならちょうどいい。
彼は伝言を告げた後、俺なんていないかのように日陰に立っている。
何処を見ているのかわからない顔で、手持無沙汰に立つ彼の二の腕に、俺はレザーで線を引いた。
「え?」
思った通りに一直線に赤い線が残る。
泣いてわめいて暴れるかと思ったのに、彼は不思議そうな顔で、俺と腕の傷を見比べる。
線はキレイに引けたのに、面白くない。
もういちど、さっきの傷と平行になるように、線を引く。
「痛いんですけど?」
「キレイだと思わない?」
同時に発せられたのは、お互い勝手な疑問形。
ぽつり、ぽつり、と彼の腕から血が落ちる。
ああ、キレイだな。
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