水辺の怪物

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 水辺に怪物が住み着いてから、私たちは通学路が変わり、犬の散歩コースが変わり、子どもたちの遊び場が高台にある公園か学校のグラウンドになった。つまり、怪物はその程度しか影響力がなかったのだ。町を破壊したり、火を吹いたりしてくれれば良かったのに。  怪物は、ある日突然現れて、こう宣言した。 「私は怪物である。水辺を根城にするが、邪魔さえしなければここに富を授けようぞ」  私たちがその傲岸不遜な要求を呑んだのは別に富が目的ではない。水辺が使えなくなっても困らなかったからだ。 怪物は大きく、公園にある恐竜の石像に似ていた。どうせ騒いでも大勢のマスコミが押し掛け、ネッシーや川に迷いこんだアザラシのような騒動になり、穏やかな日常が壊されるだけなのも分かっていた。だから私たちは怪物を「ちょっと大きな変わった河童が住み着いた」くらいにしか受け止めていない。
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