introduction

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「うるさいわよ……」 明日香の静かだけれど通る声が響き、それから教室をゆっくり見渡すと喧騒が消え去った。相変わらず明日香には妙に迫力があるな、と感心してしまう。 普段はもの静かで、他の女子みたいにはしゃぐ事も無い。成績も優秀で品行方正…其れでいてやんちゃな公平の彼女なのだから世の中はさっぱり理解出来ないのだ。 席を離れ教室の引き戸へ数歩歩き出した時だった。岡本先生が漸く現れて教壇に立ちみんなを見渡した。 最後に視線は教室一番前の窓際で一瞬留まった。 二学年になって、其の席には誰も座っていない。要するに不登校って事だ。 一年からのクラス替えのせいで、その席の主を知るのはクラスでも数人と云った有様なのだ。 岡本先生は沈んだ顔で少しため息みたいに息を吐き出した。 「みなさんに悲しいお知らせがあります――」
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