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「どこまで信じるのかは、佐久間さん次第です」明日香の言葉はそんな風に終わった。
「そうだな…すまないが少し時間をくれないか?」
僕らの返事も聞かずに立ち上がり難しい顔をして部屋の隅にあるドアの向こうへ消えていった。洗面台で水が流れる音がして、タオルで顔を拭き其の侭キッチンの換気扇の下で小さめのスツール椅子に腰掛けた。
其れから僕らに向けて緑色っぽい煙草のパッケージを僕らに見せた。一服して良いか?そんな感じで見ている佐久間さんに「どうぞ、気にしないでください」と明日香が言う。
何だか不思議な光景だ。最大にした換気の音が室内に響き、佐久間さんはぼーっと換気扇を眺めながら煙を吐き出している。
一人で頷いたり、頭の後ろを手でポリポリ掻いたり、長い溜息を吐いたり…漸く考えが纏まったらしいのは、二本目の煙草を消した頃だった。
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