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「あの、加藤くんは面会出来ないぐらい悪いんですか?」
「うーん実はそうでも無い」
「えっ?そうなんですか?」
意外な話だった――僕はてっきり遠藤先生から見えた映像の侭だと思っていたのだ。
「まあね、確かに黙った侭でぼーっとしてるが食事もしているし睡眠も摂れてるからね」
明日香が呆れた様子で呟いた。「中途半端ってその事…」
「そうだね、最初は酷かったらしいけどね。お母さんから聞いた話だが、君が遠藤先生から見たのと同じ様な事をずっと呟いていたらしい。勘弁してくれだとか、俺にはもう出来ないとか――七つの罪がどうとか言ってたらしい」
「七つの罪って…聖書の話?」
明日香がそう言った時だった――僕の脳裏に浮かんだのは山路くんの家で、お母さんから見えたアノ映像だった。
山路くんが切り裂いた刻印――背中がゾクゾクする。目の前が真っ暗になり、裂かれた刻印が徐々に 近付いてきた。
垂れ下がる腕からドクドクと鮮血が噴き出して、十字の刻印の先から手の甲を伝わり指先から床へぽたぽた落ちている。
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