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「夏休みと後ろ髪の関係がわからない…」
「夏休みだから其の髪のボサボサを直して――此処にいる可愛い女の子をプールにでも誘うべきじゃない?って言ってるの!」
最後は思いきり長い舌を出してアカンベーの顔で小走りに校舎へ向かって行く。
手を頭の後ろにあてたらやっぱり寝ぐせで髪が跳ねていた。
僕は僕の顔が好きじゃない。子供の頃から“オンナみたいだな”とからかわれた。中学生の時には、無駄に上級生の女子から可愛がられたせいで虐め紛いな事にもなった。
目立たない事が大事だ――度の無い眼鏡とボサボサの髪。本当はもう少しだけ背たけは欲しいけれど、クラスの真ん中ぐらいだから今の僕には丁度良いのかも知れない。
終業式で中身のからっぽなカバンが、今の僕みたいだなどと思い乍ら教室の机に座った。
「――――連絡は以上です。チャペルへ移動してください」
まだ新米教師の仕草が抜けない担任の岡本先生は、HRの最後にそう告げて教室を出た。
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