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introduction
ジッィィ… …ィ …ィィ―――
広い空間を覆うモスキートノイズが、まるで彼の存在と共に浄化された風に、途切れ、擦れ、消え去った――
其れでも僕らはとても爽やかな気分になどなれない。
彼の信じた神は…彼を救う事など出来なかったし、僕らも又、彼の事も彼の魂も救えたのかどうだかわからない。
静寂と少しのカビ臭さと…肌の焦げる表現すらしたくない臭いが、兎も角終わりを告げる印である事は間違いが無かった。
彼が昇華したであろう事を祈りたい気分ではあったけれど
残念な事に、今の僕らには祈るべき神を見つける事すら困難な気がした。
――十字架とモスキート――
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