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夢を、みた。
白い着物に、朱の袴だから、巫女さんだろうか。
数人集まって、橙から紅のグラデーションに染まったカエデの下で、野点をしていた。
すぐ横では、ゴツゴツとした岩の間を縫うように川が流れていく。
日射しも気持ちのいい山間部で、秋晴れの空が細長くのびている。
ぼくに気づいた巫女たちは、手招きをして迎え入れてくれた。
巫女のひとりが聞いてくる。
「あなたも、手伝ってくれるんでしょう」
そうすると、もうひとりも、
「わたしたちと同じ服を着てるもの、」
そして、またひとりが、
「これから、悪いやつが来るから、みんなで懲らしめなくちゃね」
そう言って、同意を求められるまま頷くがなんのことだろう。
自分の膝に目を落とすと、ぼくも朱色の袴を着ていた。
違和感を覚えたが、それがなにを意味しているのかわからない。
身体が重い。
そうこうしていると、川下から男がやってきた。
巫女たちは、競って男を野点に誘い入れ、そして、今や、お抹茶ではなく、皆で陽気に酒宴となっている。
男は酔い、そのうち、ぼくの膝の上で、うとうと眠りはじめた。
寝息を聞いた巫女たちは、みるみる怪しい表情に変わっていく。
「そのまま、眠ってもらいましょう」
男を殺すのだ。
ぞっとした。
男は、山内さんだった。
のんきに寝やがって、人の気も知らずに!
「山内さん起きろ、雅さんっ!」
頬を思いっきりビンタする。
ふ、と半眼になったかとおもうと、なにを考えているのか、ぼくの袴に手を入れた。
「なにをっこんなときにっ」
しかし、山内さんは、大真面目だ。
すぐに袴から出した手には、太刀が握られていた。
「こやつら、仲間だったのか」
「太刀を隠し持っておったとはっ」
ぼくが呆気にとられている間に、山内さんは巫女のようで違う女たちを斬り倒していった。
女たちの血しぶきは紅蓮のようで、草木を鮮明に染めていく。
「生きてるか?」
山内さんが、手を差し出す。いつもの、間の抜けた優しい声。
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