458人が本棚に入れています
本棚に追加
夢を、みていた。
が、目の前の山内さんは本物のようだ。
「でこ、熱いな、」
大きな手が、冷たくて、きもちいい。
心なしか、左頬があかいのが気になる。
「…ほっぺた」
「寝言でぶたれたんだけど」
「あ、ほんと」
ぼくは仰向けに寝ていて、見上げた先には空、などではもちろんなく、白い天井。
腕から点滴の管が伸びているし、どこかの病院のようだ。
「低血糖と、脱水症状だって」
「へえ」
「言葉を忘れたのかね、幸成くんは」
「しごと、は?」
すこしの、間。
「ほかに言うことないの」
「ごめんなさい」
「違います」
なんだろう。
頭がまだ、はっきりしない。
自分が病院にいて、そばに山内さんがいて、だから、ぼくをここに連れてきたのは山内さんってことか。
「…ありがと」
「どういたしまして、」
顔が近づく。
さすがに、舌までは、入れない。
「うつりますよ」
「風邪じゃないからうつりません」
じゃあ、もうちょっと、触れててほしい。
とは、言えないのに、伸ばしかけた手に気づいてくれて、それを握り、もう少し長く、唇を合わせた。
テレパシーはやっぱりいらない。
思いが伝わってしまっては、分が悪い。
最初のコメントを投稿しよう!