取らぬタヌキの皮算用

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「教授、いま、笹本くんから電話があって、」 研究室に戻ると、顔がだらけきった相澤さんに呼び止められた。 いや、わかっているよ、相澤さん。 きみのその顔の理由。 ついさっき、私自身も、気持ちの整理をしていたところだから。 きっとここにもかかってきたんだろう。 「ああ、私の携帯にも留守電が入っていたよ」 気持ちの整理はついた、とおもっていたが、無理だった。 相澤さんと目が合うと、お互いに噴き出した。 「る、留守電に、あの声が残ってるんですか!教授!!」 「相澤さん、落ち着いて!いや、なんていうか、私もね、朝からやましい気持ちになってしまったんだが、これは、永久保存版にしようとおもう」 「あの、聞かせていただけますか?」 「どうしようかな、きみみたいな淑女には耳の毒なんじゃないかな!」 「そんなことありませんっ、あ、わたしだってネタあるんですよ、教授が聞かせてくれるなら、話してもいいですけど…」 なんてことだ、やるな、相澤。 この私に、ゆすりをかけるとは。
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