取らぬタヌキの皮算用

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結局、私は相澤さんのゆすりに屈した。 しかし、それは間違った判断ではなかった。 そう、世の中には、負けて勝つこともあるのだ。 それが真理。 まず、留守番電話を、ふたりで聞くことにした。 内容はなんの変哲もないものだ。 ただ、体調が悪いから、今日は休みます、ということだけだ。 しかし、なんとゆう、声の甘さか! 時折混じる吐息といい、とても青少年には聞かせれない! こんな、こんなやつが私の研究室にいるとは… 私は幸せものだ。 ああ、生きててよかった。 そして、相澤さんのカード。 これは、彼女の脳内にしか音声が残っていないのが残念でならないほど、いや、それでよかったのか。 もし、残っていたら、ある意味、兵器だ。 「ぎゅとされたい」宣言、のあとの、テレパシー!! どこの女子だ! この平成のご時世に!21世紀に! テレパシーとは! 女子でも言わない! 私と相澤さんは身悶えた。 ひとりで愉しむのもいいが、共感し合うことの喜びは大きい。 さて、これを山内くんに聴かせるか、否か、わたしたちは頭を抱えた。
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