取らぬタヌキの皮算用

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笹本くんの本当の姿を確かめるため、私と相澤さんは計画を練った。 研究の第一歩は観察から。 ふたりの姿を観察しなければ。 そのためには、笹本くんの体調不良を、山内氏に知らせなければならない。 看病、というイベントだが、仕方ない。 これは研究のためだ。 「のぞき」などでは、断じて、ない。 これは崇高な研究なのだ! 山内氏に知らせるのは、相澤さんが担当してくれた。 最初は「大人だからだいじょうぶ」などとぬるいことを言い出したそうだが、 「弱っているときは、誰かにそばにいてほしいものですよ、」 という乙女発言に、さすがの山内氏も腰をあげたようだ。 そのとき、彼の中で、なにか邪な妄想が膨らんだのではないかと、われわれは考える。 そして、上司にかけ合い、 (実は、彼が休みをとれるよう、根回しをしておいたのだ。われわれの計画に抜かりはない。) まんまと半休をもらった山内氏は、迷うことなく、当然のごとく、愛車で笹本くんの部屋へ向かい、部屋の鍵を開けた。 (合鍵所収者、という事実に、われわれがどれほど動揺したか、想像していただきたい。)
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