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「サオリさん、情報ありがとうございます」
情報?
それにしても、柳田さんにはさわやかな笑顔なんだな。
「どういたしまして、でも、結局ジャマしちゃってごめんなさい」
「仕事だし仕方ないですよ。それに、こっちもすぐ帰らないと、このあと、学内発表ですから」
「いまの時期に?院生もたいへんね」
「はい、北村教授の気まぐれで、ま、ちょろいもんです」
それだけ言うと、おれのほうは見ることなくカウンターを離れた。
疎外感。発表するなんて、聞いてないし。
いや、おれに言わないといけない義務もないが。
もやもやと考えて席を立てずにいると、柳田さんに丸めた書類で肩を叩かれた。
「山内さん、館長がお呼びですよ」
「ああ、はい」
「笹本くん、かわいいですねえ」
おれが幸のことを考えているというのはお見通しのようだ。
でも、かわいいか?
おれには笑顔ひとつなかったんですけど!
「はあ、」思わずついたため息に、柳田さんが、あれ?という顔をする。
「山内さんに、会いにきたんですよね、ほんとは緊張してたんじゃないですか?」
「え?」
「山内さん…女心のわからないひとだとは、前々から思ってましたが…」
「は?」
「男心もわからないんですね」
なんも言えねえ。
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