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女子学生は、スマホを取り出し、なにやら指を動かしている。
しばらくして、
「学食で笹本先輩に会ったってつぶやいちゃいました」
と無邪気に画面を見せてくる。
憧れの先輩なんだな、幸は。
誇らしい気持ちでお茶を飲んでいると、
「さっきの、女心についてなんですけどぉ…」
と、女子学生が続けた。
「わたしは、女心なんて、わからない人が好きです!」
「え?なんで?」
「なんていうか…あ、女心と秋の空って言いますが、もともとは、男心と、秋の空、らしいですよ」
「へええ、そうなんだ!」
「男の人が、女心を気にし始めたのなんて、ここ百年くらいのものだから、わからなくて当たり前なのかなぁって」
なんて理知的な学生だろう。
今風な外見なのに!
「だから、女心をわかった気でいる男の人のほうがうんざりします」
おお、柳田さんに聞かせたい。
「じゃあ、君たち女性のほうが、歴史的にみて、男心をわかっているってことだ」
「そうですねぇ、」
女子学生は、意味ありげに笑って、
「先生は、それをもてあそぶ色男のように見受けましたよぉ?」
「え?」
いや、どっちかっていうと、逆だと思うけど。
そもそも、おれは先生じゃないし。って、あれ?
なにが?
今ので何を見抜いたんだ、この子は。
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