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マンキニ生活一日目は、視線が痛かった。
でも、周囲も慣れた。
それはいつの頃からかわからないけれど。
『進、最高のもてなしとは飾ることではなく自分を控えることだよ』
『人間てのは結局中庸が良いんだよ』
『不惑の四十と言ってね、その頃にはものの道理がわかってないと』
祖母の言葉が蘇る。
ばあちゃん、俺。
ニシンのパイは嫌いじゃない。
くい込むこともあるけれど、
進は元気です。
「社長、先ほど私のプライベートを奪ったとおっしゃいましたが……」
社長がじっと言葉を待つ。
「あなたが奪ったのは、過剰な布地だけですよ。
あなたはまだスーツなんですか。
不惑の四十、でしょう、そろそろ。
あなたはぷらぷらしてますが私は一切揺れ惑う事無く、常にセンターポジションキープしてますよ、ほら。」
我道 進という名は、自分勝手に進むのではなく。
後の人が通りやすいように石や草や蔑みを無くし、道を造ることなんだと祖母は言ったらしい。
衣服を脱ぎ捨てて、笑顔で股間を見せつけた。
社長は、少し笑ってネクタイを弛めた。
我道 進の不惑の日常【完】
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