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うーんと考え込んだ裕の様子を、夫は気遣わしげに見守る。
「とにかく、今日の予定はキャンセルしたことだし。明日から母さんの容態が安定するまで、実家の手伝いに通おうと思うんだけど、いいかしら」
「ああ、もちろん」
問う妻に、いわずもがなと言った様子で夫は返答する。
「今日はいいのか?」
「そうね……。夕ご飯の仕度か、お届けはやった方がいいと思う?」
「いいと思う」
「その時は私も行く!」
娘は両親の会話に割って入った。
「ねえ、いいでしょ。おかあさんの邪魔しないし、手伝えるし。いいよね?」
「あら、あなた、明日はテーマパークへ行くって言ってなかった?」
その通り。
開園三十周年記念に湧くテーマパークへ行く算段はすでに整えられていて、ホテルの手配もチケットもしっかり用意して、あとは当日を待つばかりだった。
「行けないよ、おばあちゃんが心配なのに、遊びに行っても楽しくない」
「マナが予定を変えたと聞いたら、おばあちゃんの方が気に病むんじゃないかな」
という父へ、
「治ったらいっくらでも遊びに行けるもん。だから、明日は行かない!」
娘は即答する。
なおも言い募ろうとした娘の繰り言は、母の携帯電話から鳴る着信音に遮られた。
「秋良からだわ」
そう言って、裕は受信ボタンを押した。
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