ぼく

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ぼく

二部・始 ぼくはいつも、学校の帰り道に駄菓子屋へ寄る。 とはいっても、下校中に寄り道するのは校則で禁止されていて、見つかったら先生に怒られるのだけれど。 最近は変質者なんてのが目撃されているらしくて、先生たちも大変そうだから、僕はなるべく寄り道を見られないようにしている。 あくまで、先生たちの手間をかけさせないためだからね。 今日もぼくだけの秘密の通り道を歩いて、駄菓子屋へ一直線だ。 でもね、僕は目の前の有様に失望したよ。 なんと駄菓子屋が開いていないのだ。 こんなことがあっていいものか。ぼくは必死たる思いで先生たちの包囲網を潜り抜けてきたというのに。 でも、ぼくはこんなことでくじけない。 シャッターがかかっているわけでもなく、休業します、と張り紙がはってあるだけなので、扉を開ければやすやすと進入できる。 元々カギなんかは掛かっていない。店主はそういう人なんだ。前の店主が亡くなってしまって、若いおじさんが受け継いだんだっけ。 あっさりと進入できたけれど、別に盗むわけじゃないんだ。お金は置いとくぜ、ってやつだよ。 駄菓子が無くなって、びっくりするかもしれない。お金は目立つところに置いておこう。 そうだな。店主のおじさんがいつも座ってぼんやりしているパイプ椅子にでも置こうかな。 そうしてぼくはランドセルとポケットに駄菓子を詰め込み、「先生包囲網」を潜り抜けて家に帰った。 深夜、家族が寝静まっている所、ぼくはランドセルからいっぱいの駄菓子を出していく。 晩御飯を食べたんだけど、どうもお腹が減っちゃって。 「あれっ?」 駄菓子、こんなに多かったっけ? ランドセルから出した駄菓子の数と、記憶の中の駄菓子屋に置いてきたお金の数が合わない。 どうにも足りない。 なんてことだ。これは神様の罰なのか。先生だけならともかく、警察にも怒られたらオシマイだ! 今からコッソリお金を置いていこうか。嫌だなあ。 夜道が怖いからとかじゃ無くて、変質者に見つかったりしたら大変だからだ。 でも、明日には警察が家にくるかもしれない。刑務所に入れられたりするのだろうか。 ブルブルっと体が震えた。これはもう、行くしかない。
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