1:目と目とが合う瞬間に

9/22

2382人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
「何、逃げてんの?」 バンっ。 その瞬間、後ろのタンクに手をつかれる。 あ、これ知ってる。壁ドンってやつだよ。CMとかでも最近するようになった、男が女を壁に追いやって逃げれないように閉じ込めるやつ。 ―――でも、なんか違くね!? そもそも俺、男の子だし!キュン…じゃなくてビクッ…!だったし!! それにこれ壁じゃなくて、トイレのタンクだよッ!!タンクドンだし、そんなのしたら水出ちゃうかもしれないじゃん!!! 「ねぇ、聞いてるの?」 「――ッ」 …………目が合った。 いや、仕方無い。仕方無いだろうよ。 志野くんの顔が目の前にあるんだから…! 顔近すぎッ!!なにこれ!?一種のプレイ!??! 肌綺麗すぎるだろ!!!卵肌かっ!! 「俺さぁ、訳あってこっち来たんだ」 志野くんの吐息が鼻にかかる。 うわぁ……こいつ、絶対フリスク食べてるよ…めっちゃ、ミント。 あいにく、俺は焼きそばパンだぜ。 マヨネーズたっぷりの自家製だ。もう口ん中しょうがの匂いでぷんぷんだぜ。 息でも吹きかけてやろうか…。 「地元…とはいっても隣なんだけど、そこでさぁ……大将みたいなのしてたの」 志野くんの空いた右手が俺の髪のひと房を掴んだ。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2382人が本棚に入れています
本棚に追加