1:目と目とが合う瞬間に

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山田たち御一行を見送ったところで、隅においてあったレジ袋を掴む。 「あのっ!」 「ん?」 「ありがとうございました!」 女の子が頭を下げた。 長い髪の毛がバサァってなった。 「いいよ、別に。てか邪魔だったし。あ、怪我とかしてない?」 「してないです!」 「そう。なら良かった」 一応、レジ袋の底が破れてないか確認する。 コンクリートを甘く見ちゃいけない。 立ち上がり際に改めて女の子を見ると、やっぱり可愛い。 大人しそうというより、明るい感じの子。 脚も細いし、ほどよい肉付き。 でも好みじゃない、ごめんよ! 「じゃ、俺帰るね」 「あ、はい。本当にありがとうございました!」 女の子の横を通りすぎて、アパートへの帰路を歩き始める。 ………………ん? 大きく空気を吸って、後ろを振り向く。 そこにはにこやかに微笑んだ女の子が立っているだけで、他には誰もいなかった。 「やっぱり70点だね」 「バイバーイ」なんて手を振って、再び歩き始める。 ―――あの子の隣を通った時、きつい香水の匂いがした。きつい香水つけてる子はNG。 それに頭を下げられた時、襟足が金色に染められた。 きっとあの子も俺と同じ。清楚そうに見せた隠れヤンキーだ。 ……あぁ、女の子って怖いね。
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