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ズズッ……。
ブラックコーヒーを少量口に含む。
苦さとほどよい酸味が口の中に広がり、その香りが鼻を通っていく。
「…………まず」
男はブラックコーヒーが好きなわけではなかった。むしろ、大嫌いだ。
本当はカフェオレ好きで、朝の1杯にとカフェオレを注文したが、店員の手違いでブラックが来たのだ。
"あの見た目でカフェオレは違うだろう"と判断された。
偏見とは嫌なものだ。
ブラックコーヒーの苦さに顔をしかめていると、喫茶店の前にマヤ高の生徒が現れた。
赤が強めの茶髪でほどほど身長の高い生徒。
「?」
しかし、喫茶店の前の道は通学路にしては学校まで遠すぎる。
なぜ彼はあの道を通っているのだろう。
そのことに首を傾げていると、ふいにその生徒と目が合った。
すると、驚いた顔をされ指を差された。
腹は立たなかったが何か嫌な予感がして、できるだけ関わりたくはないなと感じた男。
しばらくして、その生徒は指を差すのをやめてニコニコと微笑みながら店内へと入ってきた。
それを見た男は、あの日の自分はこんなにも不気味だったのかと、改めて反省した。
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