2395人が本棚に入れています
本棚に追加
ようやく本題に入った。
志野くんと俺の間にある、この机が境界線。
越えたら多分、殴り合いが始まるな。
「見てこれ。千明が頭突きしたところ」
「はは、ざまぁ」
志野くんが前髪をかきあげると、そこには茶色に変色した痣が存在した。
色を見るかぎり、痛みはなさそうだが顔に跡を残せたのであれば気分がいい。
「俺、頭突きとか初めて食らったよ。結構痛いね」
「あっそ。良かったよ」
「俺もしたいな、頭突き」
「あいにく、俺の額は狭い」
「じゃあ、顔面」
「鼻血出る」
「あご」
「舌噛む」
志野くんの声色がだんだん低くなるにつれ、場の空気も張りつめていく。
何が引き金になるか、わからない。まさに一触即発の状態だ。
「なんで、"Light gray"とケンカしたの?」
「覚えてねぇよ」
「どうして?」
「どうしても何もねぇよ。お前だって殴った奴いちいち覚えてねぇだろ」
「あは。生意気だね」
やめなきゃダメってわかってるのに勝手に口が……。
志野くんがコーヒーを飲む。湯気はもう立っていない。
俺は一瞬足りとも志野くんからは目を離さない。
目を離せばきっと良くないことが起こりそうだから。
最初のコメントを投稿しよう!