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「つーか、志野くん」
「ん?」
「俺を殴りに来ただけ?」
「うん!」
いやそんな笑顔で言われても……。
まぁ、それなら仕方無い。
俺はその場に正座をして、目を閉じる。
「……何してんの?」
「―――殴りたいだけ殴れよ。これ以上暴れられたら、また苦情がくる」
「それって、好きにしていいってこと?」
「そうだよ。殴るなり蹴るなりしろ、気が済むまで……」
「ふーん……」
志野くんの声が少し低くなった。
あー……久々のサンドバッグ。
ゆーたごめん。サンドバッグ痛いよな。でも、俺は諦めてねぇからな。
覚えてろ。
志野くんの顔が離れる気配がして、俺は歯を食いしばる。
「―――ッ」
「よいしょ」
ガコッ。
ん?
なんだか、隣から大きな音が……。
ドンッとした音が聞こえて、薄っすら目を開けて横を見る。
すると、そこにはひっくり返っていた机が元の状態で存在していた。
………………あ……あれ?
「千明、なんか勘違いしてるよ」
「は???」
床に落ちた、コーヒーにまみれたマグカップを拾う志野くん。
それをキッチンに持って行ったかと思えば、今度は濡らした布巾を持って来て、溢れたコーヒーを拭き始める。
え????
「確かに、千明を殴りに来たよ」
「う、うん…」
「最初は仲間の敵討ちだったけど、千明が強かったから負かされたアイツらが弱かったんだって気づいた。ほんと…………たかが1人ごときにね」
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