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この耳に響くようなバリトンボイス。
俺の記憶がえぐられる……ああ、謎の動悸が……。
俺の嫌な予感が見事に的中した証拠であった。
「――ま、政宗さん……久しぶり」
『てめぇ、俺が電話したら3コール以内に出ろって何回言った?あ゙ぁ?』
「すみません……」
冷や汗が額に浮かんでいる。
話していると、徐々に昔の記憶が蘇ってくるのだ。
そう……この人こそ、俺のトラウマ。
ここら辺を仕切っている白組(しらぐみ)に所属し幹部を勤めている、"悪魔"と名高い男、衿原政宗(えりはらまさむね)。
彼は、俺の育ての親であり、兄のような存在でもあり、師匠……(?)でもある。
最近は連絡がなく、どうしているものかと心配してはいたが、なんともないようだ。
『今日はちょっと聞きてえことがあってな』
「え、俺に……?」
『ああ。どっか人に聞かれねぇとこに行け。わかったな?』
「は…い……」
政宗さんに言われた通りにしよう。
俺まだ死にたくない。
目の前にいる志野くんに目配せをすると、こくりと頷かれた。
俺はこっそりと教室を抜け出して、近くのトイレに入る。
あー…もう1人問題児がいたよ。
あの志野くんの目、絶対に興味津々じゃん。
教室に戻った時のことを考えて、少し気分が下がったまま、再び会話を続けた。
「移動したよ。……で、話って?」
『最近、ケンカ事とか起きてねぇか?』
「ケンカ……?あ゙ー…どうだったかな……」
俺が曖昧な返答をすると、電話の向こうからため息が聞こえた。
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