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白組。今はその名でこの地域を仕切っているが、先代までは"白羽組"であった。
現、組長の白羽源氏(しらはねげんじ)が"白羽の名には覇気がない"ということで、源氏の代から名を改めて"白組"となったのだ。
それがあってなのか、見るみる間に力を大きくしていき、今の白組に至る。
「まさか藤沢組があんなにでかくなるとは思ってなくてな……縄張り争いみたいなもんだ、お前の気にすることじゃねぇよ」
黒スーツの似合うその中年男は、左まぶたの古傷を掻きながら威厳に満ちた声でそう言った。
この人こそが、白組組長である白羽源氏。政宗さんの上司である。
その白羽さんの近くで、じっと正座しているオールバックの男……政宗さん。
眉間にシワを寄せたまま表情が固まってる。
「とりあえず、山田って奴がちよ子に絡んで来やがったんだな?」
「はい。あと、何人かいたんですけど顔は覚えてない」
「わかった。名前さえわかりゃ十分だ」
それだけ言った白羽さんは重たそうに腰を持ち上げて、部屋を出ていこうとする。
「わざわざすまなかったな、千明」
「いえ……」
部屋の戸に手をかけたままの白羽さん。忙しいのだろう、目の下にうっすらと隈ができている。
「――ところで、そこの銀髪。千明には勝てたか?」
最後の最後に、俺の後ろで大人しくしていた大雅にようやく触れる。
触れなさすぎて、見えてないんじゃなかって疑ってたんだけど、見えてたんだね……。
てか、何ですか、その質問。
政宗さんも白羽さんもエスパーですか。
なんで大雅と戦ったの知ってんの??家だよ??
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