2394人が本棚に入れています
本棚に追加
庭にある小川からチョロチョロと水の音がする。
その近くの庭池には錦鯉がいて、昔はちよちゃんによく石橋から池へと落とされた。
嫌なことを思い出して、気が滅入りそうになる。
「千明と衿原さんって親子じゃないんでしょ?」
「ん?あ、ああ…」
こそこそと大雅が話しかけてくる。
「仲いいね。てか、良すぎ?」
「んー…前はこんなに話さなかったかなぁ……苦手だったし」
「ああ。暴力受けてたんだっけ?」
「笑いながら言うな。まぁ、俺が精神的に大人になったってことだろうな」
「千明ってたまに自虐するよね」
その余裕ぶった顔面に拳を飛ばしたが、ひょいと避けられた。
この野郎………ほんと、殺意芽生えることばっか言いやがって……。
しばらく、歩きながらの攻防戦を行った。
大暴れしない程度の攻防戦……肘鉄とか足の指を踏むとか、膝裏蹴るとか……かなりちっちゃめの。(※小さめの)
「チッ……大雅てめぇ、帰ったら覚えt」
「――きゃあッ!?」
「うわっ!」
ドン。
廊下の曲がり角で、不覚にも後ろを向いてしまっていた俺は、誰かと衝突してしまった。
その衝撃で、柔らかくて力の弱い華奢そうな体が跳ね返ったので、慌ててその腕を掴む。
「おっ…と!大じょう……………………あ」
「痛たたタ…タ……………………あっ」
腕を掴んだ俺と、掴まれた女。
2人とも固まったまま、お互いを見つめた。
あの日とは髪型が違うが、眉上パッツンの前髪。それに、あの左耳の下にあるハート型をした独特の痣は……。
「ち……よちゃん…………?」
「…ちー、ちゃん……?」
なんとも、少女マンガ的な再会。
最初のコメントを投稿しよう!