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マンションの前に横付けした車なんて眼中にも入らず、
あの男が居るであろう店に走ってた。
途中で、
俺に声を掛ける人もいたが、
立ち話をしてる余裕なんてない。
一刻も早く…
早く早く…マリアに…
「仁さん…今日は何か…」
入り口に近い席でユージが立ち上がり、
頭を下げて。
「あの彼。
え、っと…航…さん、
今お見えでしょうか」
落ち着いて落ち着いて。
心の中は沸き立つほど煮えくり返っているのだが、
そこは、
店の中。
下手な騒ぎを起こすわけにはいかない。
「航ですか?
居りますが…今接客中で…」
奥に視線を移して、
ユージが言った。
居るのか。
麻美が一緒だったら居ないかと思っていたが。
「少しお待ちください」
そう言って奥の角を曲がって、
VIP席のある方に見えなくなって…
あの男を連れて俺に近付いてきた。
しらーっとした顔をして、
普通の顔で俺を見据えるあの男。
今にも掴み掛かって殴ってやりたくなる…
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