第1章

4/40
前へ
/40ページ
次へ
「知るわけないじゃないですか。 自分は… 麻美は俺の顔を見てあんなに怯えた顔をしたんですよ? 自分から近付くなんてできる訳ない。 俺がどんな想いでこうしてここに居ると思うんですか! 顔を合わせないように、 でも、 同じ空気を吸っていたくて。 この気持ち、 あんたに解るのか!」 この男の気持ち… 考えてた。 なんでこの街に居座るのか。 早く帰ってほしいと願っていたのも、 この男の存在に、 どこか怯えて… だから決めつけてた。 この男しか居ないと。 麻美が独りで決める訳ないと。 だけどそれは俺の勝手な思い込みだったのか? この男のこの悲しい…真剣な表情が、 うそを言ってるんじゃないと。 「すみませんでした… 私の思い込みです。 忘れてください」 何を空回りしてるんだ…俺は。 ドアノブに手を置いて、 開けかけた時だった。 「忘れろって何だよ! あんた、麻美は必ず守るって言ったよな? あんたと居れば、 もう悲しい思いはさせないって。 なのになんだよ。 訳もなく居なくなったりしねーんだよ。麻美は。 あんたが何かしたんだろ? あんたが信じられなくなったんだろ? だから麻美は独りで… どーしてくれるんだよ! やっと落ち着くところを見つけられたって、 祝福しなきゃって… そう思おうとこっちは必死だったのに!」 掴み掛かったタケシはそう言って… 俺を殴った。 そしてその弾みで俺は、 店内に飛び出てしまった…
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加