scene1「半身の世界」

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度肝を抜かれたものである。 彼が藪から棒に、唐突にこちらの理解だとかそういったことに一切無頓着に発言をするのはよくあることだが、何せ、内容が内容だ。 赤ナイフ。 一昔前のネーミングセンスに触れるよりも、不吉な響きのイメージが先行する。 ナイフ。 赤。 何を連想する? 「残念ながら知らないな、だけど、お前は知ってるだろ。僕は世情には疎いんだ」 連想ゲームの結果を意識しないようにしながら。放課後の教室、メッセンジャーバッグに教科書を詰めつつ、そう返す。
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