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目眩がした。
足元があやふやで不確かな、不定形な物に変わったような感覚。
靴底が、
ずぶずぶと、沈むような。
「ちょ、ちょっと、待ってくれ」
右手を突き出す。あまりにも盾にするにはか弱い一本。しかし、彼女を制する効果はあったようだ。
言った通りにピタリと黙った彼女の、翠色の瞳を直視できずに、
「待てよ、展開が早すぎるだろ、そもそも僕は『赤ナイフ』のことなんて…ああもう、そうじゃなくて、そんなものになんて、大して関わっていないのに――」
相も変わらず、無様だった。
しかし、これが僕らしいといえば僕らしく、僕だから仕方がないといえば、まあ、飲み込めてしまうだろう。
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