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咄嗟(とっさ)に指を右の胸板に這わせる。
確認作業。
一筋の切れ目さえも入っていないことを、確かめるために。
それが無駄とも知らずに。
もうこの話を後にしてくれと、一蹴することは出来そうになかった。
「君は、あの怪物に自らの『存在』を削りとられたの」
目を伏せて。
喉につかえたそれを、吐き出すように、
彼女は、言った。
それは、僕には到底受け入れられない通告だったし、
彼女にしたって、それは同じだっただろう。
「これから君は、自分が跡形もなく消えるまで、あの怪物に狙われ続けることになる」
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