scene1「半身の世界」

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咄嗟(とっさ)に指を右の胸板に這わせる。 確認作業。 一筋の切れ目さえも入っていないことを、確かめるために。 それが無駄とも知らずに。 もうこの話を後にしてくれと、一蹴することは出来そうになかった。 「君は、あの怪物に自らの『存在』を削りとられたの」 目を伏せて。 喉につかえたそれを、吐き出すように、 彼女は、言った。 それは、僕には到底受け入れられない通告だったし、 彼女にしたって、それは同じだっただろう。 「これから君は、自分が跡形もなく消えるまで、あの怪物に狙われ続けることになる」
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