scene1「半身の世界」

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「…………………」 信じることなど、到底できそうになかった。 名も知らぬ女子生徒から告げられた絵空事のようなそれは、本来ならば取捨選択の末に、捨てられるものであろう。 いくらでもこの荒唐無稽を否定することは、出来る。 出来るのなら、してしまえばいい。 してしまえばいい、のに。 「…いくつか、教えてくれ」 そうしないまま。 半身のまま。 どっち付かずのまま。 優柔不断の、まま。 僕は仏頂面のまま、歩き始めた。
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