scene1「半身の世界」

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「経験談」 単純。明快にして簡潔な答え。 一言で、十分だった。 しかし、彼女は並べるのをやめない。 「私の知る『赤ナイフ』は基本として、無差別に人を襲う。無差別に人を消し去る」 まるで動物の習性でも解説するように。 まるで道具の使い方でも説明するように。 僕は、その語り口に違和感を感じる。 「…そんなに決まりきったものでも、ないと思うけど」 『赤ナイフ』は、人のようだった。 中身までどうかは知らないが、明らかにその気配は異形の物であったが、少なくとも、その姿形は。 だから、彼女の経験談とやらには、少し、抵抗を覚える。 殺されかけた相手に、 人間性を、求めていた。 「いえ、私の経験上、『赤ナイフ』の行動には何かのポリシー…プログラムめいたものがあると、確信しているの」
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