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「こら、へっぽこ! 人の部下をナンパするんじゃない」
「はいはい、へっぽこは、退散しますよ。馬に蹴られたくはないですからね」
「お前なぁ……」
「それでは、さようならー」
バイバイと、手を振りながら、
まるで、不思議の国のアリスに出てくる、チェシャ猫のような笑みを残して、
訪れた時と同じ唐突さで、麒麟探偵は、部屋を去って行った。
台風一過。
パタリと、ドアが閉ざされた広い部屋に満ちたのは、なんとも言えない脱力感。
でも、それは、けっして不快なものではなく、
見送りに出た玄関ドアの前で、
課長と二人、顔を見合わせて、思わずクスリと笑いあう。
「騒がしい奴で、申し訳ない。あれでけっこう有能なんだが……」
「楽しい方ですね。好きですよ、私。ああいう人」
麒麟探偵さんこと、風間太郎さん。
今後、どういう関わり方をするかは分からないけど、
たぶん、良い友人になれる、
そんな気がした。
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