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「ええっと、ペーパーフィルターと、コーヒーの粉は……」
豪華だけど、イマイチ生活感がないキッチンスペースで、唯一使用感を漂わせているコーヒーメーカーをセットするべく、
必要な材料を物色しながらも、応接セットで交わされている課長と探偵さんの会話が気になって、仕方がない。
私にコーヒーを頼んだ探偵さんの意図は、わかっている。
5分間ですむという、私に聞かせたくない話をするためだ。
でも、広い部屋の端っこにあるとはいえ、このキッチンスペースは、壁に隔たれているわけじゃない。
だから、会話の内容はどうしても耳に届いてしまう。
聞いちゃだめだとは思うけど、気になるものだから、私の耳は、象さん状態になっている。
『耳ダンボ』ってやつだ。
「この写真の出どころは? まさか、お前が趣味で撮ったわけじゃないだろうな」
――写真?
写真って、どんな写真?
未だ不機嫌モード持続中らしい課長の低い声音に、ダンボの耳は、さらに拡大する。
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