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「失礼な。僕に盗撮の趣味は、ないですよ」
と、盗撮!?
「まあ、依頼なら喜んで受けますけど。しかし、君らしくもなく、迂闊に色々やらかしてくれますね。付け入られる隙、満載じゃないですか」
探偵さんの質問には答えず、課長は逡巡するような沈黙の後、静かに口を開いた。
「……それで、出どころは、ヤッコさんか?」
「正確に言えば、ヤッコさんが雇ったあまり性質の良くない、僕のご同業です。金を積まれれば、違法スレスレの、というか立派に犯罪モノのことを平気でやってのける輩ですよ」
『違法スレスレ』
『犯罪モノ』
探偵さんの穏やかな口調からはかけ離れた、物騒極まりないワードの数々に、私は、思わず息をのんで、コーヒーを入れる手を止めた。
再び落ちる先刻よりも長い沈黙が、内容の深刻さを物語っている。
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