第1章.九条君と駅

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突然だが…。 人生で初めて、俺、九条優は電車に乗る。 小中と学校は送迎され続け、公共交通機関というものに乗った事はおろか関わったことすらないのだ。 家柄、容姿、学歴、愛想。 全てが整った俺だが、残念な事に庶民の暮らしには馴染みがない。 「何だこれは…。人ばかりではないか」 初めて入った駅を見回し、むせ返りそうになる空気に嫌悪を抱く。 中央の柱に飾られた時計を見ると、6時50分を過ぎたところだ。 登校までには幸い時間はある。 高校へ行くのは初めてだから、家を早くに出たのだ。 さすがに高校まで送迎も嫌だ。 ジイヤには悪いが、これからは自力で登校しようと考えていたんだ、が… 「切符というのはどこに置いてあるんだ?」 腕を組んで考えてみるが、検討もつかない。 しばらく壁際に立ち、駅を見渡してみると、女が何やら機会の前に立ち、紙切れを買っているのを目撃した。 あれは切符か!? 買うのかあれ!! 慌てて女のいたところまで走り、ボタンの並べられた機械を見てみる。
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