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「もう一回……」
少しずつ、魔力の操作の仕方がわかってきて、コツを掴んでいく。
高速移動をもう一度使って、怪物を交わす。空振りして隙が出来たところに、雷撃を放った。
しかし、あまり効いておらず、同じ攻防を繰り返す。息が上がって、大きく深呼吸した。
「疲れた……」
『魔力が減ってきたね……魔法のことをなにも知らないのにこれだけできればいいんだろうけど……』
この怪物が現れてから、八分が経っている。普通の魔法使いに成り立ての人では、二分と持たないだろう。
まだ準備が完璧ではないまま緊急的に魔法使いになったにも関わらず、これだけ戦えるだけで声としては十分だった。
しかし、この狭い空間に怪物と一対一という状態を打破する力は持っていない。
竜也自身も、それは痛感していた。
「逃げるっていうのは……あり?」
再び飛びかかってきた怪物を交わしながら、声に聞く。
『ありだけど外にもこいつらいるからね』
「でも、人がいる……」
今、怪物が完全にドアへの通り道を塞いでしまっている。逃げるなら……。
『うそ!?』
窓を開け放って飛び降りた竜也に、声までもが拍子抜けしていた。
さっきの戦いで、魔力が体を強くするのがわかっていたので、足に魔力を集中させてなんとか着地する。
思ったよりも怪物が多くて背筋に冷たいものが通った。
「たつ!」
「お母さん!」
真綾が駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きしめられ、力が抜ける。
「よくやった」
ふっと緊張が途切れ、ほっと息を吐く。
「こわかった……」
くしゃくしゃと頭を撫でられ、少し恥ずかしくなって真綾から離れた。
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