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さっきまで竜也と戦っていた怪物が、真綾の左肩を噛み砕き、そこから先を食いちぎってしまった。
突然すぎて、残酷すぎて、視界がぐらりと揺らぐ。涙なんて、出てこない。がくがくと震えて、どうしようもないくらい奥の方から何かがこみ上げてくる。
元の感覚に戻った時間が、倒れる真綾と、竜也を見る血まみれの怪物を映し出す。
「あ、ぁ……!」
真綾が、死んでしまう。
自分が気づいていれば、中に怪物がいることを伝えていれば……自分が強ければ、母は死ななかった。
自分が、弱いから。
叫んだ声と一緒に、雷が荒れ狂った。
『ま、待って、魔力を使いすぎたら意識が……』
声が遠くから聞こえてきたものの、全く頭に入らない。
怪物はどこかへ逃げてしまって、がくんと膝をついた。
その地面には、人間はこんなに血があるのかと思うくらいの血だまりで。
他の怪物が、竜也を見据える。
自分も殺される。
怖い、気持ちが悪い。
真綾はもう息をしていそうになくて。
真綾を揺すっていた手が、自然と止まって、うつろな目で怪物たちを見た。
ーー殺すなら、早くしてくれ。どうして動かないんだよ。
竜也だけが動き、"竜也だけが時を刻んでいる"ような。
早く、早く……殺してくれ。
自分は……お母さんが死んでしまった原因。
だったら、同じように……。
意識が遠のいて倒れる寸前に、時間の流れが元に戻ったような気がした。
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