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「今日からよろしくね」
誰もいない部屋に向かって挨拶した。静かな部屋、明るい空間。ひとりで生活するのは何年振りだろう。幹太と同棲を始めたときから何年経つだろう。大して量もない荷物を整理した。
荷物を片付けて、私はスマホを取り出した。そして電話を掛ける。相手は優子。
「もしもし神辺です」
「神辺……センパイですかあ? 何か」
「会いたいんだけど、時間作れる?」
「はい、今からでいいですか?」
「ええ構わないわ。あのカフェでいい? うちの会社の近くの」
「じゃあ1時間後で」
私は通話を切ってウィークリーマンションを出た。カフェはすぐそこ。早めに行って席を確保していた。
優子と話をしたかった。これまでのこと、これからのこと。そして優子の気持ちも確認しておきたかった。そんなのは私の一方的な押し付けで、優子は聞きたくも話したくもないだろう。でも私はケジメを付けたかった。
「こんにちはセンパイ」
「こんにちは。ありがとう優子」
「不倫相手にお礼ですか? 意味わかんない。お人好しですね、相変わらず」
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