832人が本棚に入れています
本棚に追加
店員にアイスコーヒーを注文すると、優子はすぐに煙草を取り出した。
「優子、煙草は止めたほうがいいわ。体に良くないから」
「で、話って何ですか?」
「優子、幹太のこと好き?」
「ええ。まあ」
優子は私の勧告を無視してライターで煙草に火をつける。大きく吸い込んだのか穂先の火は明るくなる。そして思い切り私の顔目掛けて息を吐いた。思わず咳き込んだ。それを見た優子はクスクスと笑う。
「大学のとき、私、優子に頼んだわよね。幹太に彼女いるのか探って欲しいって」
「はい」
「私、すごく酷なことをしたって思ってる。優子は幹太のこと好きだったでしょう?」
そう尋ねると優子は返事もせず、煙草をふかした。
「あのとき優子の気持ちに気付いてたらきっと、優子には頼まなかったと思う。私、自分のことで精一杯で。って言っても今もそうなんだけど」
「何がいいたいんですか? そんな同情を誘う言葉で幹太を諦めろってことですか?」
「違うの。こんな私だから、きっと、幹太とうまく行かなかったんだと思う」
「ホントに優等生ですね! イライラします、そういうの」
優子はスパスパと煙草を吸う。私から目を逸らして窓の景色を見ながら。
「別れることにしたの、私たち」
「そうですか」
「だから煙草止めて。赤ちゃん、欲しいでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!