832人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも」
「俺も神辺さんのドレス姿、見たいし」
穂積くんはカウンターのマスターに空のグラスを上げて、お代わりを注文した。穂積くんは背が高いからタキシードも様になると思った。
「穂積くんのタキシード姿、見たいな」
「俺?」
「うん」
「俺は恥ずかしいから着ないし」
「狡い。なら私もドレスは着ない」
「分かった。俺も着るから神辺さんもドレス着ろよ。ならいいんだろ?」
何となく屁理屈な気もするけれど、私は頷いた。
「ドレスだと仰々しいから、ワンピースがいい」
「ワンピース?」
「そう。結婚式の二次会とか、御披露目パーティーで着るような、軽い感じのドレス」
「ふうん」
穂積くんはピンと来ないのか、不満げに相槌を打つ。
「どこに売ってるの?」
「デパートのドレスショップ。あとはアトリエかな」
「タキシードも置いてるのか?」
「勿論。買わなくてもレンタルって言う手段もあるわ」
「タキシードはレンタルでいいけど、ドレスは買えよ」
「買うの?」
「俺が買うから」
最初のコメントを投稿しよう!