§14 ウェディングドレスと4月の雨

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「でも」 「俺も神辺さんのドレス姿、見たいし」  穂積くんはカウンターのマスターに空のグラスを上げて、お代わりを注文した。穂積くんは背が高いからタキシードも様になると思った。 「穂積くんのタキシード姿、見たいな」 「俺?」 「うん」 「俺は恥ずかしいから着ないし」 「狡い。なら私もドレスは着ない」 「分かった。俺も着るから神辺さんもドレス着ろよ。ならいいんだろ?」  何となく屁理屈な気もするけれど、私は頷いた。 「ドレスだと仰々しいから、ワンピースがいい」 「ワンピース?」 「そう。結婚式の二次会とか、御披露目パーティーで着るような、軽い感じのドレス」 「ふうん」  穂積くんはピンと来ないのか、不満げに相槌を打つ。 「どこに売ってるの?」 「デパートのドレスショップ。あとはアトリエかな」 「タキシードも置いてるのか?」 「勿論。買わなくてもレンタルって言う手段もあるわ」 「タキシードはレンタルでいいけど、ドレスは買えよ」 「買うの?」 「俺が買うから」
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