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「うん。ありがと」
私は酔っ払いの戯言だと思って軽く受け流していた。その夜、穂積くんちに泊まった。最後だと思って、穂積くんの体を愛でた。大きな手、肩、背中。広い胸、がっしりとした腰。全てにキスを落とし、感謝した。今までありがとうって。
翌日、土曜日。2人でドレスショップに出向いた。そして出迎えたスタッフに友人を招いて開く御披露目パーティーに着るワンピースタイプのドレスが欲しいと告げた。壁一面に掛けられたドレス達の中からスタッフは幾つかを私たちの前にもっと来た。
「これ……」
「こちらですか?」
ハイウェストで切り替えのある、Aラインの膝丈のワンピース。デコルテの部分はうすいオーガンジーでシースルーになっていて、首にはサテンのチョーカー。スカートの部分にも同じオーガンジーのギャザーがサテン地の上に優しく重ねられていて。
「レンタル出来ますか?」
「こちらは見本品で、お作りいただくデザインで」
スタッフが申し訳無さそうに答えると、私の隣にいた穂積くんは、お願いします、と言った。
「穂積くん?」
「このデザインで作ってください」
スタッフは採寸しましょうか、と私を奥の部屋に案内した。
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