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ドレスは1週間後、仮縫いを終えて、試着してサイズを確認したあと本縫いに入り、その1週間後にお渡し、になると説明されて、私たちはアトリエを後にした。
「再来週だな」
「うん。楽しみ」
「太るなよ」
「もう……」
駅で別れて、私はウィークリーマンションに戻った。手帳を広げて日時を確認する。再来週……もう3月末だ。その数日後にはまた入社式に入社研修が始まる。穂積くんと出会った施設、一緒に歩いた海。私が人事部にいるうちは何度でも足を運ぶ場所。穂積くんとの思い出に会える場所。
……そして、2週間。
「ピッタリだな」
「当たり前でしょ」
「馬子にも衣装」
「もう。年上をからかって」
2人でアトリエに向かい、ドレスを着た私を見て穂積くんはからかう。自分でも鏡に映る自分を見て思った。予想以上にしっくり来て、Aラインがすごく可愛い。それでいて派手過ぎず、上品で。
「満足か?」
「うん。大満足」
穂積くんが会計を済ませる間、私はドレス達を脱ごうと試着室に戻ろうとした。
「おい」
「何?」
「このまま行かないか?」
「どこに?」
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