§14 ウェディングドレスと4月の雨

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 そんなことをして何になるんだろう。着飾った姿を穂積くんに見せて、それだけ。  1時間ほどして車は海岸沿いの県道を走っていた。海は曇り空を映して、濁った群青色。右手には坂、その中腹に研修施設も見える。そこを通り過ぎて、正面に十字架が見えた。白壁の古びた教会。手前にある空いたスペースに車は止まった。 「そういえば研修施設から十字架だけ見えたね。ここだったんだ」 「ああ。行こう」  穂積くんは運転席から下りると助手席側に回り込み、ドアを開けた。そして右手を差し出して私をエスコートする。 「ほら」 「……うん」  右足を地面に置いて、手を引かれて立ち上がる。ふわりと揺れる裾、曇天といえど空からの光を受けてキラリと光るサテン地。憧れのウェディングドレス。見上げれば穂積くんの顔。  穂積くんに手を引かれて教会の扉に続く階段を上る。右半分だけ開かれた重厚な木製の扉、そこから中を覗いた。
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