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無の境地に一度達して、先ほどの自分の痴態を受け入れた。じゃないと瀬戸くんにいじられるに決まってるし。
冷めてしまっているだろう瀬戸くんの分のコーヒーを眺めながら、そう言えば一口も飲めなかったんだななんて考えていた。
水の音がやけに近く聞こえるような気がして風呂場の方を見るけど、やはりいつもと同じ感じ。
――俺とエッチしたい?
ふいに瀬戸くんのセリフが不意にフラッシュバックしたのは、シャワーって言う単語とセリフの内容があまりにもありふれているからかもしれない。
ヤバいなあ。
あんなに真っ直ぐに俺の眼を見てこんなことを言ってくるなんて。本当に、ただ純粋に訊いてきただけなんだろうに俺ときたら動揺しまくりだし……ホントにカッコ悪い。
脳裏に焼き付いた瀬戸くんの綺麗な身体までもが俺の煩悩に汚されていく気がするし……自分がイヤになる。
沈んで沈んで沈んで。一度ハマったら抜けることのできない沼のように、思考の闇は深くなる。
一人でうじうじしてしまうこんな俺を、いつか瀬戸くんが呆れるのかと思うと怖くて仕方ない。
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